断熱と太陽光がなぜ大切か、どうすれば進むか
2023.09.13
目次
深刻化する地球温暖化
出典:気象庁https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html
2023年の夏は、日本だけでなく、世界的にも記録的な暑さだったそうです。上のグラフは気象庁による日本の夏の平均気温の幅を表したものですが、一番右の値が2023年の値です。6月から8月は平年より1.76度も高くなっています。熱中症の救急搬送は、前年度の2倍、お盆の一週間だけで7,360人だったそうです(消防庁)。
2023年7月28日、山形県で、女子中学生が熱中症の疑いで亡くなりました。部活動帰りだったそうです。また、8月22日、小学2年生の女の子も熱中症の疑いで亡くなっています。体育祭の練習の後だったそうです。教室が「暑さの避難所」として存在していたら、このような痛ましい事件は避けられたのではと思います。
このままではより深刻化する気候変動
グラフ:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センター
もし、これまでの気候対策を続けていくだけだったら、もっともっと悪化します。1.67度の上昇でこんなにくるしかったのに、5度も上昇したらどうなるでしょう。でも、それはありえない話ではありません。上のグラフは、地球温暖化防止活動推進センターのグラフで、IPCC、国連の気候変動政府間パネルの報告書をもとに作成されたものです。
青いニコニコマークが、持続可能なシナリオ、赤いバッテン目のマークが化石燃料をこれからも使い続けるシナリオで、その最悪のケースは5.7度上昇しています。
いますぐ、持続可能なシナリオ–本気の気候対策を実施しないと、気温上昇はとめることができません。
気候危機を回避するには、CO2の大幅な削減が必要
このグラフは、世界全体の温室効果ガス排出量です。気候危機を回避するためには、世界の気温上昇を1.5℃以内に抑えなければなりません。そのためにどのように減らさなければならないのかを示したのが水色の曲線です。つまり、2030年までに大幅な削減が必要です。
各国がいま、国連に申告している約束を守った場合の範囲を示したのが、灰色の点線で、約束を守っても、1.5度以内抑えることができない、と予測されています。日本は、2030年までに2013年度比で46%削減を国連に申告してますが、それでは、ぜんぜん足りないのです。
3割を占める建築物のCO2排出
グラフ:地球温暖化防止活動推進センター(出典:温室効果ガスインベントリオフィス)
では、CO2の排出を大幅に削減するためにはどこに力を入れたらよいでしょうか。
上のグラフは、日本のCO2排出量を部門別にみたものです。もっとも多いのが産業部門、次いで運輸部門です。そのあとに業務と家庭部門となっています。業務と家庭部門は、ビルや家屋からの排出ですので、建築物由来となります。建築物由来のCO2排出は、産業部門に次ぐ排出源で、全体の3分の1を占めます。
自宅のゼロエネルギー化がもっとも削減効果大
グラフ:国立環境研究所のサイト「脱炭素型ライフスタイルの選択肢 地域別データ可視化インタラクティブツール」 カーボンフットプリント 削減効果(KgCO2 e/人/年)
CO2の削減には「ライフスタイルの変容」が必要といわれています。では、どのような「変容」が効果的なのでしょうか。上のグラフは脱炭素型ライフスタイルの選択肢で、効果の大きい順に並んでいます。上位5位を自宅のゼロエネルギー化が占めています。家の断熱性能を高めることと、太陽光パネルを設置すること、家の機器を電化することなどです。このグラフは、「自宅」を想定していますが、業務部門のビルでも断熱性能を高め、太陽光パネルを設置し、機器を電化することでCO2が大幅に削減できます。
国の「地域脱炭素ロードマップ」では2030年までに新築の平均でネットゼロエネルギー
表:国の「地域脱炭素ロードマップ」 ZEB=Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
国の「地域脱炭素ロードマップ」でも、建築物の脱炭素は重点政策になっています。「地域脱炭素ロードマップ」では2030年までに新築建築物について、平均でZEB(ネットゼロエネルギービル:使うエネルギーと作るエネルギーでプラスマイナスゼロになるビル)を実現していることを目指す、となっています。実は、プラスマイナスゼロでなくても、ある程度省エネを達成しているビルも含めてZEBと呼べる、ということになってはいるのですが、とにかく平均、ということはほとんどすべてのビルが省エネ型になっている、ということになります。高層ビルでは、太陽光パネルでつくりだされる電気でビル内で使用する電力を賄うことは困難ですが、低層ビルではそれを目指していくことが必要でしょう。
それを実現するための政策に、政府の建築物では率先してZEBを実現することや、民間に関しては行動変容促進などがあげられていますが、しかし実際には、平均でZEB、を達成するには、より強力な政策が必要です。
断熱と太陽光を進める施策とは
強力な政策とは、たとえば太陽光発電設備設置の義務化などです。
東京都や川崎市では、すでに太陽光が義務化が決まっています。
太陽光は、義務化がきまったけど、高い断熱性能の義務化なんでできるの?と思われるかもしれません。しかし、太陽光も、東京都が義務化するまで、できると思っていた人は少なかったのではないでしょうか。実は、高い断熱性能の義務化は、長野県のゼロカーボンロードマップの中でかかれています。
以下は脱炭素を進める施策例です。
- 東京、川崎:太陽光パネル設備設置義務化(2025〜)
- 長野県:高い断熱性能義務化(2025年以降早期)
- 東京都:純ガソリン車新車販売禁止(2030年までに)
- 東京都:温暖化対策計画報告書制度で削減義務付け
- 長野県:再エネ電気購入努力義務(2022〜)
これらの施策は、できるし、やらなければならないし、その上、やったら、市民の暮らしの質が高まるものです。断熱性能が高まれば、エアコンの効きがよくなり、夏涼しく、冬暖かく(断熱性能が高ければ無暖房も可能)、結露もなく、健康快適な暮らしが手にはいります。
こうした事実を、ぜひ、広めていきましょう。
お住まいの自治体で断熱や太陽光を進める方法は、いろいろあります。
たとえば、自治体や、議会の会派、議員個人へ要望書を渡す、議会に陳情・請願をするなど。
以下に過去の例が掲載されています。ぜひ、参考になさって要望や陳情・請願をしてみてください。
要望書や陳情・請願を出そう
断熱に関する要望書の例(以下のリンクでブログが開きます。その中に要望書例があります)
学校の大規模改修の際には、ZEB化、ZEB化がかなわない場合でも「断熱改修」をしてください
断熱に関する陳情・請願の例
市有施設の断熱性能向上を求める陳情
太陽光発電設備設置義務化に関する陳情・請願の例
太陽光パネル設置義務化を求める陳情・請願
陳情・請願の方法はこちらにかかれています。
また、要望や政策提言をする方法は要望書の提出や陳情・請願以外にもたくさんあります。
自治体アクションきほんのき や 自治体議会に対してできる気候アクション を参考にしてください。
事務局でも、いつでも相談を受け付けています。定例会や、スラックで、または個別相談をお申し込みください。
参考:
5月25日ウェビナー「屋根置き太陽光パネル設置を全国で標準化するには」資料
「屋根置き太陽光パネル設置標準化をめざして」(資料)
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授 前真之氏
ご紹介頂いた参考資料(https://sites.google.com/view/building-decarbonization)
・「新築住宅等への太陽光発電の設置等を義務付ける新制度について」(資料)
東京都環境局気候変動対策部環境都市づくり課長 福安俊文氏
・「川崎発 脱炭素チャレンジと太陽光発電」(資料)
川崎市環境局脱炭素戦略推進室室長 井田淳氏
動画など
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