東京都国立市で「市有施設の断熱性能向上を求める陳情」が採択されました!
2022.04.23
2022年3月24日、東京都国立市議会本議会にて「市有施設の断熱性能の向上を求める陳情」が全会一致で採択されました。
地域レベルの気候変動対策を考える上で、住宅や公共施設など、建物の断熱性能向上は今や重要な争点となりつつあります。
最先端の断熱技術やエネルギー循環への注目が高まる今、自らの自治体で「市有施設の断熱性能を向上させることを求める陳情」を提出し、採択を実現させた、東京都国立市在住・まいさん。
陳情提出への思いや、採択に向けて取り組まれたことについてお話を伺いました。
目次
文章を書くのが苦手な私が陳情を出した
私は文章を書くのに時間がかかったり人前で話す際に緊張しやすいです。ただ、ここ数年の夏の暑さが自分が子どもの頃と明らかに違うなと違和感を覚えたり、日本の豪雨被害を報道で見て悲しく感じ、気候変動の影響だと知って驚きました。そして、私自身、子どもを持ちたいけど数年後に子どもが熱中症になりやすい気候になっているのかなという不安もあり、そんなことが積み重なって気候変動対策を求める活動を始めました。
同じ時期に、駅前で署名活動をしていた市議会議員と話して「陳情と請願」という言葉を知ったり、断熱の勉強会で「温暖化対策に断熱が重要」なことや、ゼロエミッションを実現する会(ゼロエミ)の活動を通して「気候危機を回避するのに必要な、地球の温度上昇を1.5度に抑えるという目標を守るため、2030年までに大幅な再生可能エネルギーと省エネルギーへの転換が必要だ」ということを知りました。自分の自治体である東京都国立市のホームページで温暖化対策の政策・アクションプランの資料に「断熱」というワードが見つからず、自治体の動きが足りないと感じ、気候変動対策を求める陳情を出そうと思いました。
そもそも、建物の断熱化とは?
家の造りで外気の侵入を防ぎ、エアコンの空気が逃げないようにすることです。例えば、良い断熱材を建物に使用したり外壁を厚くしたり二重ガラス窓、木材サッシ等を使用するなどがあります。
メリット
◎少ないエネルギーで夏・冬を快適に過ごすことができる
⇒・温室効果ガス削減
・夏冬の電気代が削減
・仕事・勉強効率も上がる
◎病気を予防・改善
・結露しないためカビが出来にくく、アレルギー・喘息の軽減につながる
・災害の避難所として冬のヒートショックを防ぐことができる
・断熱材によっては室内の湿度を一定に保つことができるため、感染症予防につながる
ゼロエミ勉強会や調べて作った資料が採択へと結びついた
ゼロエミの勉強会で自治体アクションの基本情報をインプットしたり、メンバーに相談したり、国立市の温室効果ガスの削減目標や気候変動対策のリサーチをしました。 ゼロエミのホームページで、港区にて「区有施設の省エネ断熱性能の向上を求める請願」が満場一致で採択されていることを知り、国立市でも採択になる可能性が高いのではと思い、陳情内容に決めました。文章を書き、メンバーや市議会議員に見てもらい提出しました。
(内容)・迅速な気候変動対策の重要性
・政府もZEB(ゼロエミッションビル)*を推し進めている
・建物を断熱することのメリット
〔アプローチ〕
採択されてほしくて、私は(1)市議向けの資料作り、(2)市議に会って説明、(3)委員会にて説明をしました。(これらは必須でないので、ご自身ができそうな範囲でOKです♪)
(1)資料:
大幅な温室効果ガス削減が必要だと示すグラフや、日本各地での調査で明らかになった断熱の効果など科学的な情報と、環境省をはじめとした国の補助金制度についてを盛り込みました。
(2)市議に説明:
市議に電話で、「直接説明したいこととメールで資料を送りたい、説明の前に見ておいてほしい」旨を伝えてアポを取りました。私の意見や思いを議員さんに会って話すことで、議員から国立市の断熱性能向上へ向けた意欲や、予算への不安を聞くことができたことは、とてもいい機会でした。このプロセスの中で、市議の方のお話も参考にしながら陳情で求める内容を決めました。
(3)審議する委員会で説明:
委員会で市議と市の職員に向けて、自分の思いや国からの補助金などについて話しました。また委員会での質疑応答で、私自身が必ずしも大掛かりな資金をかけた断熱の点検の必要性を求めていないことをその場にいる市議と職員の方々は理解してくださりました。
結果として、委員会にて全会一致で採択され、本議会でも採択されました。決定事項として、①市有施設の断熱性能を点検すること、②新しい市有施設を優れた断熱ビルにすること、③既存の市有施設は順次、断熱改修されることが決まりました。
採択されて嬉しかったけど、建て替え予定の設計図には反映されない…
採択されて嬉しかったです。アプローチを通じて、気候変動に危機感を持っている市議の声を聞けたり、子どもを育てたいけど子育の環境への不安を理解してくださる方がいると分かり、心強く感じました。ただ、今年に建て替えをする予定の市内の小学校の設計図に関しては、「陳情に挙げられているレベルの断熱性能は反映されていない」ことが分かり、不安要素として残りました。今後も、市議や市役所職員の方に質問したり対話を続けていこうと思います。
追記:2022年5月 市役所の職員の方々が建て替え予定の小学校の断熱性能を調査してくださっていることが分かりました!
行動してみる価値あり!
動いてみて知らないことが出たり迷うことがあったとき、ゼロエミにいる先輩が助けてくれました。アクションを始めるには勇気がいると思いますが、市議会の委員会メンバーの半数が賛成すれば採択になるので、動いてみたら成果があると思います!今回、私が作成した文章と資料は使ってもらって大丈夫です◎
*ゼロエミッションビル:
Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼びます。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです(環境省ウェブサイトの説明より)。
実際には、収支がゼロになっていないものもZEBと呼んでいるなど問題もあります。
提出した陳情書
2022年2月15日 国立市議会議長 青木健 様 国立市が新設・既設の市有施設の省エネ断熱性能の向上を求める陳情 ●陳情の趣旨 近年、酷暑や集中豪雨、巨大台風など気候変動の影響は身近な生活に及んでおり、世界全体が危機的状況になっています。これに対し、国内外の自治体や企業では地球温暖化対策に取り組む動きが活発化しています。 日本政府は2020年に2050年温室効果ガス排出実質ゼロにするカーボン・ニュートラル宣言をし、2021年に「2030年温室効果ガス削減目標(以下NDC)を46%とし、さらに50%の高みをめざす」と示しました。一方、国連環境計画は「各国が示す2030年NDCを達成したとしても、世界平均気温は産業革命前と比べ今世紀末までに2.7度上昇する」と報告しました。それを受けて国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、参加国が気温上昇を1.5°Cに抑える努力をすることが合意され、各国に対し2030年の目標を再検討・強化し2022年末までに提出することが求められました。国立市では2021年2月にCO2排出量の実質ゼロを目指す「2050年ゼロカーボンシティ」を表明しました。 政府はCO2排出削減のためにエネルギー消費量を減らす省エネルギーの取り組みを重要だとして、環境省・経済産業省・国土交通省・文部科学省において建物でのエネルギー消費を収支ゼロにするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の導入に向けて動いています。東京都港区で、区有施設の断熱を求める請願が採択されました。 断熱性の高い建築物は、冬に寒すぎず湿度を保ち、夏に暑すぎない環境であり、そこで過ごす人の健康・快適性・生産性を高める効果があるとの知見が得られています。学校で子どもたちの勉強の効率の向上や感染症予防、学校・庁舎で働く人の作業効率や健康を高めるメリットがあります。 また、市有施設は災害時の対応拠点や生活する避難所として活用されます。停電により暖冷房が途絶えることも想定され、断熱性能の高い避難所は、市民の命を守ることができます。実際に東日本大震災で、宮城県の断熱化された体育館を避難所として運用した際、冬場でも室温を保つことに役立ったと報告されています。 建築物の省エネルギー性能の向上の改修はコスト高になるとの誤解もありますが、ランニングコストの低減により長期的にはむしろトータルコストの削減につながります。先行事例として、宮城県仙台市や愛知県豊田市の小学校で断熱改築すると、冬の電気エネルギー消費50〜60%削減が立証されました。 市有施設において率先して省エネ断熱性能を高めることは、市民にとって安心をもたらし、国立市の大きなイメージアップになります。 国立市議会において本陳情を採択いただき、市有施設を省エネ断熱化していただきたくお願い申し上げます。 次の3項を検討事項として陳情いたします。 ●陳情事項 1. 市有施設の断熱性能を点検し、性能が低い施設のピックアップをお願いします。 2. 改築工事の予定があるものは、その機会を逃さずに断熱改修を要望します。 3. 新設予定の建築物に高い断熱性能を採用していただけるようお願いします。
ゼロエミッションを実現する会では、市民からの自治体・議会へのアプローチを行っています。
今まで取り組んだことのない方でも大丈夫。
「ゼロエミッションを実現する会」には、たくさんの仲間がいます。
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