アクションブログ
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神奈川県の8校の既存校舎で、最上階の天井の断熱が実現。ぜひ、あなたの自治体でも要望を。

2024.07.11

 こんにちは。ゼロエミッションを実現する会・横浜(以下、ゼロエミ横浜)の梶本寛子です。横浜市在住で、二人の子どもを育てています。2021年からゼロエミ横浜で活動に参加してきました。

 神奈川県の8つの高校・支援学校で、今年度、最上階の教室の天井の断熱工事が行われることになりました。

 わたしは、昨年8月29日、学校の断熱改修を求める署名を、当時の永岡桂子文部科学大臣と井出庸生副大臣に提出しました。その時の大臣との意見交換で、大臣は、市民が地域の工務店の協力を得て、一教室の断熱改修を参加者を募っておこなう「断熱ワークショップ」をすることや、小中学校などの断熱改修に使える国の交付金を、地方自治体が利用することを期待されているように思いました。

 国は、今ある交付金などの制度の中で、各自治体が自ら行動をしてもらうことに期待している、そのような状況の中、気候危機は待ったなしの状況で、毎年暑い夏はやってきます。どうしたら少しでも早く、子どもたちの学校環境が改善されるのだろうと、頭を悩ませました。

 そんな中、昨年の署名提出後、ゼロエミ横浜は地元の神奈川県の県議会議員さんや横浜の市議会議員さんと面談し、今、学校の教室が暑くて大変だということ、その原因と対応策についての対話を重ね、主な政党に昨年の9月、「学校の教室を断熱するための予算要望書」を提出しました。面談を行った県議会議員さんが学校の環境について議会で行政に質問をし、その結果、行政の対応として、今後の学校の改修時・工事の際には、断熱材を入れる工事も合わせて検討する流れが決まっていきました。

 現在、断熱材は、校舎の新築時・改築時に入れるようなメニューになっているそうなのですが、議員さんからの質問により、校舎の耐震工事や、その他メンテナンス工事の際に、断熱材も一緒に入れてもらえるようになりました。

 今年度は神奈川県の8つの学校の校舎で断熱材を施工することが決まりました。対象の学校とスケジュールは以下の通りです。

<最上階の天井の断熱工事が行われることになった学校/施工時期など>

学校名工期断熱材の種類何の工事と一緒に施工する?
市ヶ尾高校2024年3月〜2025年3月ウレタン吹付(50mm)耐震改修工事
川崎北高校2023年7月〜2024年6月(完了)ポリスチレン3種(35mm)耐震改修工事
厚木王子高校2024年8月〜2025年1月ポリスチレンフォーム(30mm)屋上の全面改修
湘南高校2024年7月〜11月ポリスチレンフォーム(30mm)屋上の全面改修
綾瀬高校2024年4月〜9月ポリスチレンフォーム(30mm)屋上の全面改修
平塚工科高校2024年4月〜10月ポリスチレンフォーム(25mm)屋上の全面改修
小田原東高校2024年8月〜10月ポリスチレンフォーム(25mm)屋上の全面改修
瀬谷支援学校2024年4月〜9月ポリウレタン断熱ボード(30mm)屋上の全面改修
神奈川県への聞き取りよりまとめ

専門家の意見では、実は25mmから30mmでは足りない*、そしてポリスチレンフォームなどは環境負荷の高い素材であることなど課題はありますが、暑さをなんとかする、ということでは、一歩前進となりました。

効果的な断熱改修とは

それでは、効果的な断熱改修とは、どんな改修でしょうか。

*文部科学省発行「学校施設のZEB化の手引き」(下図)では屋根断熱に関しては硬質ポリエチレンフォーム100mmが紹介されています。

葛飾区の事例では天井に、高性能グラスウール200mm+50mmとあります。

第2回学校建築脱炭素研究会シンポジウム資料「葛飾区の学校断熱改修への取り組み」より

断熱で「キーン」と冷えた


教室の断熱改修を行うことで、学校の夏の暑さ対策を根本的に対処することができます。
下は、東京大学の前真之准教授の資料の画像です。
天井ボードの上にグラスウールや、壁にネオマフォームを入れて断熱改修をし、窓は遮熱対策を行った教室と全く断熱をしていない「ゼロ断熱」の教室のサーモグラフィの画像です。断熱の入っていない教室では、エアコンをつけていても32度〜34度だった教室が、断熱改修後は、26度〜28度くらいに下がっています。

ゼロ断熱の最上階教室         改修で「しっかり断熱」

断熱改修後、夏休み明けで帰ってきた生徒にアンケートを取ったところ、「前は、”モワッ”としていたけど、工事をしたらい”キーン”と冷えていました!とっても涼しくなりました!」「とても涼しくて集中できる」といった声があがったそうです。(画像は同じく東京大学 前真之准教授の資料より)



自分の住んでいる地域の議員さんと、学校の教室環境について対話してみよう!

 もしかしたら、あなたの近くの議員さんは、教室が暑いということを知らないかもしれません。エアコンの温度を20度、18度と下げていけば涼しくなる教室はあるでしょう。ですが、太陽熱でカンカンに熱された教室(特に最上階)をエアコンで冷やすことは、ものすごいエネルギーを消費します。すでに地球沸騰化と呼ばれる時代に突入し、どんどん夏も暑くなっていきます。少しでも早く教室の環境が改善され、無駄なエネルギーも使わない構造に転換できるように、学校の断熱改修について要望することは、今後の子どもたちにとってもプラスになると思います。

 市民一人だと、断熱改修を実現することは難しいですが、議員さんに相談をして、正式に議会で議論していただくことで、状況は動くんだな、と実感しました。1年前は、ゼロエミ横浜はこれからどうしたらいいのか悩んでいましたが、自分のまちをゼロエミに、というモットーで、地元の議員さんと対話をすることで少し状況が前進したことは、希望の光となりました。

<ゼロエミ横浜が使用した要望書>

※議員さんへお見せする資料として「いまココ会議2023」のゼロエミ横浜の資料もご活用ください!

https://zeroemi.org/wp-content/uploads/2023/12/yokohama-2023imakoko.pdf



神奈川県の議員さんの議会質問の内容

 ゼロエミ横浜が面談した議員さんは、学校の温度環境についてお話しさせていただいた時、非常に重要な問題と熱心に聞いてくださいました。一方で今学校の改修予算に優先的に振り分けられているのは、耐震改修と、トイレの改修ということを伺いました。その後、議会で質問をしてくださることになりました。

 その時の議会質問の内容は以下の通りですのでご参考にしてみてください。流れとしては、1️⃣学校の温度調査→2️⃣現状の把握→3️⃣今後の対応策(断熱改修をどのように実施するか)になります。 

 まずは学校の温度環境がどういう状況なのか、問題があるのか・ないのかを把握してもらうために行政が自ら動くことがとても大事なステップになります。現状を把握した上で、次に対応策に進めるのです。

 できれば、この暑い夏に、2️⃣現状の把握ができれば、来年度の予算に断熱の改修コストを入れ込んでくれるかもしれません。今各会派が来年度の予算要望作成に向けて、団体のヒアリングを行っている時期になりますので、是非ともこの時期にお近くの議員さんと面談をして、来年度の予算に入れ込んでもらえるように、議会質問を依頼してみるのもいいかもしれません。

<2023年9月 第三定例会 一般質問>————————————————–

🔹県議会議員さんから教育長へ、以下の指摘がされました。

・地域行事の参加や親世代の人からエアコンをしても教室が暑い

・7月8月の横浜の気温、過去最高→教育環境を圧迫している

・エアコンの整備は概ね完了しているが、県立学校の校舎は古く断熱性に乏しい

・教育委員会として、室温はどのようになっているのか、教室個々に状況を把握してほしい

・問題があるのであれば速やかに対策してほしい

・脱炭素にも効果があるので、そういう点でも断熱性能向上が必要である

🔹県議会議員さんから教育長へ、以下の質問がされました。

・県立学校における夏季の教室について、室温の状況を把握することが大切だと考えますが、所見を伺いたい。あわせて、今後、校舎の断熱性の向上に向けた取組も必要だと考えますが、所見を伺いたい。

🔸教育長の回答

・学校の温度は28度以下、教員が確認しながら調節を行うことになっている

・子どもたちが頻繁に出入りしたり一定の温度を保ちにくい

・日差しの当たり方、室温の感じ方も人によって違う

・今後学校にヒアリングを行い、実情を把握をし、来年の夏に備えてより効果的な温度管理の手法等について検討する

・断熱材は冷房効果を高める有効な手法の一つのため、新築は使用を基本にしている

今後も児童の健康に影響を及ぼすことがないよう適切な教室の室温調整をはかり、教育環境の整備を努めてまいります。

🔹県議会議員さんから教育長へ、意見表明

今後どのようにすれば適切な環境を整備できるか、望ましい温度は18度以上28度以下と示されています。今のオフィスは空調機器が快適にされているのはパフォーマンスに影響するからだと思いますし、児童生徒にとってもそれは同じ。

文科省が望ましいという温度基準を満たすようにして欲しい。

まずは、現状の把握→個々の教室での対応策を検討して欲しい。

<2024年6月 第二定例会 代表質問>————————————————–

🔹県議会議員さんから教育長へ、以下の質問がされました。

県立学校における教室の暑さ対策の現状を踏まえ、今後、教室の効果的な温度管理に向けてどのようの取り組んでいくのか?既存校舎の断熱性の向上を図る取り組みについてどのように考えているのか?

🔸教育長の回答

・昨年の猛暑を踏まえ、学校の実情を把握のため、複数の県立学校にヒアリングを実施

・エアコンから十分な冷風が出ていても、日差し対策や、空気循環をしなければ、同じ教室でも場所により温度に大きな差が生じることが判明した

・エアコン使用時にはカーテンを閉める、サーキュレーターで空気を攪拌する

・校舎の断熱化は、直射日光の影響を最も受ける屋上において、今年度、8校の既存校舎で防水工事を行う際に合わせて、断熱材を施工する

学校の断熱改修は、地球沸騰化時代の適応策であり緩和策

学校の断熱改修は、これからの地球沸騰化時代の適応策でもあり、緩和策でもある、そして生徒たちの集中力向上にも関わってくる、これから育っていく世代にとって必要な対策です。

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