アクションブログ
「ゼロエミションを実現する会」の活動や関連する情報をブログで紹介しています。
随時更新していますので、ぜひ、チェックをしてみてください。

システムチェンジとは?

2022.10.06

ゼロエミの仲間たち

システムチェンジとは?

「こんな雨は生まれて初めて」と被災したお年寄りが言うほど甚大な被害をもたらしている近年の豪雨や台風。毎年記録を更新し続ける真夏の猛暑。ニュースでは海外の山火事や干ばつが報道され、人々もいきものたちも、地球規模でいのちの危機に直面しています。

近年の気象災害の原因は人間活動に起因する温室効果ガス排出による温暖化です。産業革命以降、世界の平均気温は1.2℃上昇し、1.5℃という超えてはならないポイントに近づいていて、今後も被害の悪化と拡大が予想されています。このまま温室効果ガス排出が拡大すれば、人もいきものも住めない地球になることもシミュレーションされています。

この危機を最小限に食い止めるには、どうすればいいのでしょう?産業革命前の生活に戻ればいいのでしょうか?

答えはNO。今の暮らしを続けながら危機を食い止める技術や方法は既にあります。実施を妨げているのは、化石燃料に依存する社会や経済を作っている法律や制度=システム自体。システムを変えて脱炭素社会にすることで、子どもたちに持続可能な地球を手渡せるとしたら。でもそんな大それたことが私たちにできるの?

たった3.5%で、世界は変えられる

ひとつ例を挙げましょう。東京大学未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所の江守正多氏は、「なぜ日本人は気候変動問題に無関心なのか?」(※2)で、社会の仕組みが根本的に変わった例に「分煙」を挙げています。

ワニさん

ひと昔前まで、路上、飲食店、交通機関、職場などでの喫煙は当然のことでしたが、健康増進法により受動喫煙対策が強化され、今では分煙スペースがある飲食店が当たり前の光景です。

分煙が常識という根本的な社会変化=システムチェンジが起こったのです。そしてその実現には、必ずしも社会の大多数が関心を寄せなくても良いことも説明しています。

分煙社会が生まれたのは「受動喫煙の健康被害を立証した医師、嫌煙権訴訟を闘った原告や弁護士などの『声を上げた人たち』と、それを支持した一部の人たちの存在」であり、大部分の人は「無関心でいるうちにいつの間にか生じたシステムの変化に受動的に従っただけ」ということ。

これを証明するかのように、アメリカの政治学者エリカ・チェノウェス博士は、20世紀以降の何百もの社会運動を調べ、フィリピンのマルコス独裁政権に反対した「エドゥサ革命」など、人口の3.5%以上が参加した非暴力の抵抗運動は必ず成功した」との研究結果を提示しています(※3)。

3.5%は、30人学級に約1人というイメージ。社会運動に本気で参加する人が特別に多くなくても、一部の人たちが声を上げれば社会は変えられるのです。

ゼロエミの仲間たち

これを読んでくれているあなたのように温暖化を心配する人は、思ったよりもたくさんいます。そんな仲間と一緒に、何ができるのか考え、自分のまちの議会に声を届けましょう気候変動対策に前向きな首長、議員候補者に投票しましょう。みんなで一緒に変化を作りあげれば、健康増進法のように、法や条例の整備につなげていけるんです。

気候危機を食い止めるシステムチェンジには、以下が挙げられます。

1. エネルギー源を化石燃料から再エネへ

石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料は、採掘、生産、燃焼のすべてで多くの二酸化炭素を排出します。世界各国で代替エネルギーとして再生可能エネルギー(再エネ)の開発、活用が急速に進んでいます。

日本では2019年度、化石燃料が一次エネルギー供給の約84%、電源構成の約76%を占め(資源エネルギー庁)、強く依存しています。

水力や太陽光、風力をはじめとしたさらなる再エネ開発を加速させ、主力電源化する社会システムを作ることが急がれます。

2. 低断熱の建物からZEB/ZEHへ

日本の住宅やビルは断熱性能が非常に低く、省エネ基準は先進国で最低水準です。建物の断熱性が低いと冷暖房効率が下がり、エネルギー消費が多くなってしまいます。

欧米諸国では、居住者の健康のために冬季の住宅の最低室温を定めた法令や指針があるのに、日本にはありません。最近の省エネ性能向上を背景に、ようやく政府や一部の自治体が建物の一次エネルギー消費を正味ゼロにするZEB(net Zero Energy Building)やZEH(net Zero Energy House)を制度化する動きが出てきました。これを加速させる必要があります。エアコンを消したり温度調整で我慢していた時代から、誰もが高断熱の建物で気持ちよく健康に暮らすのがあたりまえの時代に、早く移っていきましょう。

エネルギー源を化石燃料から再エネへ /  低断熱の建物からZEB/ZEHへ

3. 大量生産・消費社会から循環型社会へ

私たちの暮らしは、モノを大量に作り使い捨てる消費スタイルの上に成り立ってきました。毎日大量に廃棄されるプラスチックは石油が原料です。衣類、食品、家具などは全て、生産・流通の過程で温室効果ガスを発生させます。必要以上にモノを作らず、可能な限り再利用、リサイクルする社会に変えていきましょう。

シェアやリースも有効です。パソコンなどのオフィス用品のみならず、オフィス自体を共同利用すればエネルギー消費を大幅に削減できます。限りある資源を効率的に利用すれば、持続可能な社会が築けます。

4. 不自由なく移動できる社会とゼロエミッション車への転換

交通分野は二酸化炭素の排出量が特に多い分野。資源保護の観点からも自動車の総量削減が重要です。税金やローンやガソリン代を負担しているのに休日しか乗らないマイカー所有から、カーシェアリングなど「必要な時に使う」ベネフィットをみんなが享受できる社会がいい。例えば電車やバス、自転車など多様なモビリティが活用できるMaaS「Mobility as a Service」のような便利な仕組みが有効です。

同時に、ビジネスや公共サービスで必要とされる自動車は、EVなど排気ガスを出さないゼロエミッション車への転換が急がれます。ガソリン車の新車販売の中止をはじめ、再エネによる充電ステーションの普及拡大など、社会インフラの整備も急ぐ必要がありますね。

5. カーボンプライシングなどCO2排出削減策の強化

カーボンプライシングは、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出量に応じて価格付けして、排出を抑える仕組みのこと。

排出量あたりの税率を決める「炭素税」と、排出量の上限(排出枠)を決め、排出枠を金銭で取引する「排出量取引」があります。

図:炭素税と排出量取引の概要(環境省「カーボンプライシングの意義」より)
図:炭素税と排出量取引の概要(環境省「カーボンプライシングの意義」より)

炭素税は、政府などが二酸化炭素に課税して化石燃料の価格を上げて需要を抑えることで排出量を減らす仕組み。

  • 2012 年から全化石燃料を課税対象とした「石油石炭税」に税率を上乗せする形で「地球温暖化対策税」が導入され、税収は地球温暖化対策に活用されていますが、諸外国と比べ税率が低いと言われています。

排出量取引は、政府などが個々の企業に温室効果ガス排出量の上限(排出枠)を設定し、排出量が排出枠を下回った企業は、上回った企業に売却して収入が得られる仕組みです。

温室効果ガスの排出を削減するほど他の企業に売却できるため、経済的なインセンティブが働きます。

日本では、東京都や埼玉県が運用していますが、国としての制度を作り、幅広い地域に普及させることが望まれます。

図:排出量取引のイメージ(環境省「国内排出量取引制度について」より)
図:排出量取引のイメージ(環境省「国内排出量取引制度について」より)

カーボンプライシングには他にも様々な方法があり、国境を超えた活用など多角的に運用できるため、環境省などが検討を続けています。最適な制度設計となるか注視し、パブリックコメントや投票などを通じて声を届けていく必要があります。

(カーボンプライシングに関する参考資料)

JETRO「世界で導入が進むカーボンプライシング(前編)炭素税、排出量取引制度の現状」
環境省「カーボンプライシングの活用に関する小委員会 中間整理(概要)」
環境省「カーボンプライシング」
環境省「環境に関わる税制」

※1  https://unfccc.int/news/2020-was-one-of-three-warmest-years-on-record
※2 初出:江守正多(2020)気候変動問題への「関心と行動」を問いなおす―専門家としてのコミュニケーションの経験から, 環境情報科学, 49 (2), 2-6.
※3 The ‘3.5% rule’: How a small minority can change the world (BBC)