「長野県ゼロカーボン戦略 ゼロカーボンロードマップ骨子」を読む
2023.05.18

ゼロカーボンのトップランナーの長野県のゼロカーボンロードマップ骨子が公開されています。
参考:こちらのサイトの下のほうの「長野県ゼロカーボン戦略 ゼロカーボンロードマップ骨子」
目次 >ロードマップは「ゼロカーボンへのみちしるべ」 >長野県ゼロカーボン戦略 ゼロカーボンロードマップ骨子 > ・目的 > ・目標 > ・交通分野 > ・家庭分野 > ・産業分野 > ・吸収分野 > ・再エネ分野 > ・学び・行動分野 >あなたの自治体でもロードマップを |
目次
ロードマップは「ゼロカーボンへのみちしるべ」
ロードマップとは、目標実現まで、いつまでにどの施策をする、次はどの施策をする、という工程を示すもので、どうやって目標を達成していくかが明確になり、また全体像を俯瞰でき、より具体的な個別の施策の立案に役立ちますし、ロードマップの公開により、関係者のみならずすべての人々と目標とそこにいたる道のりを共有することができます。
なので、ロードマップは、ゼロカーボン達成にはとっても重要です。
ぜひ、ご自分の自治体にあるかないかを調べて、なければ、つくってください、と要請してはいかがでしょうか。(ゼロエミ横浜のアクションはこちら)
ここでは長野県のゼロカーボンロードマップを詳しく見ていきたいと思います。(挿入画像はすべて「長野県ゼロカーボン戦略 ゼロカーボンロードマップ骨子」からです)
長野県ゼロカーボン戦略 ゼロカーボンロードマップ骨子
〔目的〕
「長野県ゼロカーボン戦略 ゼロカーボンロードマップ骨子」には、目的として以下が書かれています。
「施策の効果 社会経済情勢の変化及び技術の進展などを踏まえて 施策の追加 具体化更新 などを行うための基礎とするとともに 気候変動に対する危機感と合わせ 県民・事業者をはじめとする多くの皆様と共有することを目的とする」

わたしたちの暮らしでも、たとえばお仕事のことを考えても、目標を設定したら、それをどうやって達成するのかをチーム全体で共有して、お互い助け合ったりしますよね。ロードマップをつくって公表することって、それと同じだと思います。ゼロカーボンの実現にとっても、行政・県民・事業者の間のチームワークが大切で、そのために、共通の目標とロードマップの共有が大事ですよね。
〔目標〕

まず、最初にあるのが、「温室効果ガス排出量の目標」です。
長野県は基準年を2010年度としています。そこから、最新実績、そして、目指す場所である2030年の姿を表しています。そのためには、乗用車の1割がEV(電気自動車)に、新築住宅のすべてがZEH(ネットゼロエネルギーハウス)に、企業は年間3%づつ省エネしましょう、みどりは増やす— とってもわかりやすく2030年の姿が示されています。
ここからあとは、分野別のロードマップとなります。
〔交通分野〕

交通分野では、基準年度比56%削減することにしています。
56%というと大変大きい数字に感じますが、基準年から2019年まで、すでに12%削減していますから、あと44%(正確には現在2023年なので、もっと少ないですね)、必要削減量は192万t-CO2です。
それをどう減らすのか。
まず、めざす状態は、乗用車の1割をEV・FCVにすること。
「隗より始めよ」で公用車は100%EV化です。
また、一般のみなさんにEVを選んでもらうためにはインフラ整備が必要なので、充電器の設置を急ぎます。
「設置しましょう」と奨励するだけではそこまですすみませんから条例をつくります。
宿泊施設、集合住宅、商業施設等に努力義務を課す。
交通分野の脱炭素化はEV化だけでなく、自動車の走行そのものを減らさなければ達成できません。
そこで、公共交通機関の脱炭素化と利用拡大(電車・バス・タクシー・空港・自転車)を目指します。
こちらには「めざす状態」が書かれていないのですが、「2023年〜交通政策局設置により取り組みを推進」とあるので、これからなんだな、とわかります。
〔家庭分野〕

建物(家庭)分野では、基準年度比52%削減することにしています。
2019年までに、すでに17%削減していますから、あと35%(正確には現在2023年なので、もっと少ないですね)、必要削減量は134万t-CO2です。
それをどう減らすのか。
めざす姿は、新築住宅の100%をZEH。(いまある住宅についても2030年時点のめざす姿がほしいですね)
条例で、エネルギー性能・再エネ導入検討義務をして、2025年以降早期に適合義務基準化、創エネ設備設置義務とありますね。そしてさらに2030年までに適合義務基準強化とあります。東京都と川崎市が太陽光発電設備の設置の義務化を決定しましたが、あとに続くのでしょうか。そして、2025年から省エネ適合義務化が国全体ではじまりまりますが、長野県では「強化」とあるので、より高い性能で義務化するのでしょう。わくわくしますね。
建物(おうち含め)の断熱はとても重要ですが、家庭部門では冷蔵庫など電力をたくさん使う機械の省エネ化も大切ですよね。めざす姿として3割が省エネ家電とあります。そのために、条例で家電販売店に省エネラベル提出義務を課し、一般家庭も含むのでしょうか?省エネ機器使用の努力義務とあります。
そしてもうひとつ、大切なのが「使う電気を再エネ」にすること。
めざす姿は電気使用の3割を再エネにすること。これも条例で再エネ電力使用の努力義務です。よびかけるだけでは、意識の高い人しか切り替えないという現状を直視した結果ではないでしょうか。
〔産業分野〕

産業・業務分野では、基準年度比59%削減することにしています。
2019年までに、すでに25%削減していますから、あと34%(正確には現在2023年なので、もっと少ないですね)、必要削減量は261万t-CO2です。
それをどう減らすのか。
めざす姿は毎年3%の省エネ。あと7-8年で毎年毎年3%減らすのは、あとのほうになるほど難しくなってくると思いますが、さまざまな施策を打ち出していますね。
条例で建築物エネルギー性能・再エネ導入届出義務、その数年後の適合義務基準強化と創エネ設備設置義務化。こちらも、国の省エネ適合基準を上回る基準での義務化と太陽光などの再エネ設備の設置義務化でしょう。再エネ可能エネルギー電力の購入努力義務も条例で導入です。
〔吸収分野〕

吸収分野というのは、二酸化炭素を吸収してくれる緑のことです。主に森林になります。
長野県は基準年の森林吸収を144万t-CO2としていてこれを2030年までに177万t-CO2まで増やします。
長野県は県土の約8割が森林で、この維持が中心施策となっています。
またもうひとつの柱が都市の緑化です。「グリーンインフラ」を推進しています。
グリーンインフラとは「自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組み」のことです(環境省HPより)。具体例として、みどりの広場や街路樹、生態系ネットワークに配慮した都市公園などがあります。
〔再エネ分野〕

再エネ分野では、目標値は生産量です。
まず屋根ソーラー。2030年までの目標が22万件となっています。屋根ソーラーに関しては2030年に向けて新築では義務化されるようです。野立ても増やす計画で「適正化」のための条例がはいっています。
公共施設では2040年に100%です。
創エネについては小水力発電の開発にも力を入れています。

再生可能エネルギーの生産量を20年で倍増というと不可能に感じてしまいそうですが、このように途中経過を内訳を示すことで実現できそうな気がしてきますね。
〔学び・行動分野〕

最後が、学び・行動分野です。
めざす姿は「脱炭素型ライフスタイルへの転換」
ここでの見どころは「目指せ100か所!学生断熱普及プロジェクト」や「すべての建物に屋根ソーラーを!プロジェクト」や「エネルギー自立地域プロジェクト」(すべて仮称)。
断熱や屋根ソーラー設置など「システム・チェンジ」をすすめるところがいいですね!
あなたの自治体でもロードマップを
どこの自治体でも作れるはずですし、ゼロカーボンの達成のためにはつくることが必要です。
まずは、あなたの自治体でもつくることを議員に提案し、議会でとりあげてもらいませんか?
よかったら、以下の文章を参考に、議員にメッセージを送ってみてください。
〇〇(SNSなど)で、活発なご活動を拝見しています。
いつもいろいろありがとうございます。
〔メッセージ例〕
こんにちは! 〇〇に住んでいる〇〇です。
今日は、ぜひ、議会で、「ゼロカーボンロードマップの作成」についてとりあげていただきたく、メッセージをさしあげています。
実はわたしたちの自治体にはゼロカーボンを達成するまでの「ロードマップ」がありません。
ロードマップとは、目標までの道のり(行程)を、時系列順に示すものです。ロードマップの公開により、関係者のみならずすべての人々と目標とそこにいたる道のりを共有することができます。
長野県では2023年3月に分野ごとのロードマップを示した「長野県ゼロカーボン戦略 ロードマップ骨子」を公表しています。
●長野県HP:長野県ゼロカーボン戦略(第四次長野県地球温暖化防止県民計画、第一次長野県脱炭素社会づくり行動計画)【令和3年6月策定、令和4年5月改定】
(サイトの一番下にリンクがあります)
ぜひ、私たちの自治体でもロードマップを作っていただきたいです。
行政へのお問い合わせや、議会で質問するなど、お力添えをお願いいたします。

ゼロエミッションを実現する会では、市民からの自治体・議会へのアプローチを行っています。
今まで取り組んだことのない方でも大丈夫。
「ゼロエミッションを実現する会」には、たくさんの仲間がいます。
ご参加リクエストをお待ちしています!
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