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地域脱炭素ロードマップはやわかり

2023.06.15

日本政府が2021年につくった「地域脱炭素ロードマップ」には、地域がどのように脱炭素を達成していけるか、2030年、2035年、2040年など2050年脱炭素に向けた絵姿・目標がかかれています。日本全国の自治体が、このロードマップに沿って脱炭素していくことが期待されていますが、実際、読んでみた、という方は少ないのではないでしょうか。

「地域脱炭素ロードマップ」は55ページあり、写真やイラストがなく、あまり読みやすいとは言えません。そこで、ゼロエミ事務局がイラストなどを追加して、まとめてみました。

自分の自治体の気候対策を強化したい市民のみなさん、ぜひ、この「地域脱炭素ロードマップ」を根拠に、気候対策の強化策を提案していきませんか?

目次

地域脱炭素ロードマップがめざすもの:

太陽光発電の導入、建築物の省エネ、EV、再エネ調達

地域脱炭素では、太陽光発電設備の導入、建築物の省エネ、EV化、再エネ調達が求められています。

太陽光

2030年:設置可能な建築物の約 50%に導入

2040年:設置可能な建築物の100%に導入

建築物の省エネ(再エネ含む)

ZEB(ネットゼロエネルギービル):2030年までに新築建築物の平均で実現

ZEH(ネットゼロエネルギービル):2030年までに新築住宅の平均で実現

(公共施設では率先して実現)

EV

2035年までに乗用車の新車販売で100%

再エネ調達

公共部門で実質標準化

「地域脱炭素ロードマップ」は2030年までの地域脱炭素の工程と具体策を示したもの

「地域脱炭素ロードマップ」は、とくに2030年までの地域脱炭素の工程と具体策を示したもの。2023年6月9日、国・地方脱炭素実現会議(脱炭素社会の実現に向けて検討や議論の取りまとめが行われる会議)がつくりました。

出典:環境省「脱炭素地域づくり支援サイト」

「100か所の脱炭素先行地域」「重点対策を全国で実施」で2030年全国で脱炭素ドミノ

その工程は、「100か所の脱炭素先行地域」と「重点対策」の全国の実施で2030年には全国脱炭素ドミノを実現し、2050年を待たずに、脱炭素地域社会を全国で実現するというものです。

キーメッセージは、「今ある技術」で「再エネ最大限活用」で「地域課題解決」

企業立地・投資の魅力を高める地域脱炭素は地域の成長戦略

地域脱炭素は、今ある技術で、再エネなどの地域資源を最大限活用することで、地域の経済が活性化し、地域課題を解決できる、「地域の成長戦略」です。

脱炭素をできるだけ早期に実現することで、地域の企業立地・投資上の魅力を高め、地域の産業の競争力を維持向上させます。

出典:地域脱炭素 ロードマップ【 概要 】

再エネ最大限活用で、経済収支の改善を

(年間20兆円の海外流出を防ぐ)

地域における再エネの導入拡大が鍵。地域で利用するエネルギーの大半は、輸入化石燃料。

輸入費用は年約20兆円にのぼります。環境省の試算は約9割の市町村で域外への支出が上回っています。

地域の再エネポテンシャルを有効利用すれば、地域の経済収支の改善につながります。

出典:環境省「脱炭素地域づくり支援サイト」

エネルギー代金を地域内で循環させ、所得の向上

再エネ施設を設置して、再エネを地域内で販売することで、自治体の外にでていっていたエネルギー代金を、地域内取引で循環させ、地域住民の所得を向上させることができます。

出典:環境省「脱炭素地域づくり支援サイト」

雇用、投資、地域資源の利用、地域事業者による設備整備、再エネ地産地消で地域に利益

地域資源を生かし、「消費する地域」から「生みだす地域」に移行し、その収益を地域内で再投資することで、新たな産業と雇用を生み、地域内で経済を循環させることができます。

出典:環境省「脱炭素地域づくり支援サイト」

今ある技術で今から始める–建築物の更新時に脱炭素化しないと2050年脱炭素実現できない

地域脱炭素の実現には、現在のインフラや経済・ビジネスを、脱炭素へと移行していく必要があります。

庁舎や学校等の公共施設、廃棄物処理施設や上下水道等の公衆衛生施設、住宅や業務ビル

等は、今更新すれば2050 年にも利用されている可能性が高いものです。今から更新時に、省エネ性能の向上や再エネ設備の導入、電化や燃料転換等により脱炭素化を進めていく必要があります。

出典:環境省脱炭素ポータル

脱炭素先行地域と重点対策で「全国脱炭素ドミノ」をおこす

脱炭素先行地域ー全国で100か所の脱炭素モデル

脱炭素先行地域とは、2050年脱炭素の実現に向けて、電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロ、交通なども含めて温室効果ガス排出の大幅削減を実現する、脱炭素社会のモデルとなる地域です。地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、環境省など国も積極的に支援しながら、少なくとも100か所において2030年までに実行します。農山漁村、離島、都市部の街区など多様な地域で、地域課題解決と住民の暮らしの向上と、脱炭素を同時解決する方向性を示します。

出典:環境省ウェブサイト

経済規模は1000人規模の場合40〜100億円

地域脱炭素実現に伴う経済活動の規模 (どの程度経済が動くのか)は、1,000 人規模の脱炭素先行地域を想定して、設備投資に伴い約 40〜100 億円程度(雇用規模 80〜180 人相当) 、脱炭素実現後に年額約3~5億円程度と環境省が試算しています。

主な取り組み内容

・再エネの導入

・住宅・建築物の省エネ(断熱・気密向上)導入

・蓄電池としても利用可能なEV/PHEV/FCV活用

・再生可能エネルギー熱や未利用熱、カーボンニュートラル燃料の利用

・地域特性に応じたデジタル技術も活用した脱炭素化の取組

・資源循環の高度化(循環経済への移行)

・CO2排出実質ゼロの電気・熱・燃料の融通

・地域の自然資源等を生かした吸収源対策等

(詳しくは:環境省脱炭素地域づくり支援サイト)

重点対策ー脱炭素の基盤となる対策を全国で実施

地域脱炭素ロードマップでは、全国で取り組む脱炭素の基盤となる重点対策8つを整理。

国はガイドライン策定や積極的支援メカニズムにより協力します。

①屋根置きなど 自家消費型の太陽光発電

絵姿・目標

2030年:設置可能な建築物の約 50%に導入

2040年:設置可能な建築物の100%に導入

工夫/政策例

・PPAモデルやリース契約による初期投資ゼロでの太陽光発電設備の導入

・駐車場を活用した太陽光発電付きカーポート(ソーラーカーポート)

・定置型蓄電池や EV/PHEV 、 給湯機器等と組み合わせ、再エネ利用率を拡大 

・現時点での導入容量及び今後導入可能な容量の把握

・自治体の建築物等や土地への設備導入の促進

事例

・横浜市等PPA 事業(小中学校 65 校に太陽光発電と蓄電池を設置。災害時レジリエンス)

・島田市等PPA 事業(小中学校4校に太陽光発電と蓄電池を設置。災害時レジリエンス)

・沖縄電力 かりーるーふ (太陽光発電及び蓄電池を無償で設置。居住者への電力供給

②地域共生・地域裨益型再エネの立地(ソーラーシェアリング、風力発電、地域連携など)

絵姿・目標

・地域が主役で地域と共生、地域に裨益する再エネ事業展開、地域脱炭素の主役に

工夫/政策例

・営農型太陽光発電など一次産業と再エネの組合せ

・未利用地や営農が見込まれない荒廃農地、ため池、廃棄物最終処分場等の有効活用

・地元企業の活用、地域金融機関の出資等による収益の地域への還流

・既存の系統線や自営線等を活用した再エネの地産地消・面的利用

・エネルギー大消費地の大都市部と再エネの豊富な地方の連携による再エネ開発と融通

・農山漁村再エネ法に基づく促進区域等の制度(ゾーニングなど)

・FIT制度の着実な実施・運用

・再エネ事業支援ガイドブックの作成

・地域共生型の優良な再エネ事業の顕彰及び広報等を通じた横展開

事例

・匝瑳市 匝瑳メガソーラーシェアリング発電所(安定的・継続的農業経営への貢献)

・北上市 市庁舎建設計画のあった遊休地に市が事業主体となり発電を実施

・飯館村 村出資の SPC が太 陽光と風力を連携運用(クロス発電)し設備利用率を底上げ

・松前町 リエネ松前風力発電所(蓄電池を併設。再エネで地域を活性化し人口減少回避)

・睦沢町 CHIBA むつざわエナジー(再エネ売電収益を利用した先進予防型まちづくり)

・生駒市 いこま市民パワー(再エネ売電収益を利用した登下校見守りサービス等の提供)

・横浜市と東北地方 13 市町村 再エネの開発・融通等のエネル​​ギーに関する協力連携 

③公共施設における徹底した省エネと再エネ電気調達、 更新や改修時のZEB化誘導

絵姿・目標

2030 年までに新築建築物の平均で ZEBを実現

新築の住宅はZEH、新築の公共施設や業務ビルはZEB とする*

公共施設等は率先して ZEB を実現

公共部門の再エネ電気調達が実質的に標準化

工夫/政策例

・共同入札(共同購入)

・複数の電力需要を束ねた入札や最低価格まで競り下げるリバースオークション

・公共施設改修時の省エネ化・ZEB化

・公共建築物のZEB化

・公共建築物への複層ガラスや樹脂サッシ等の導入、増改築等時の省エネ性能向上

・公的機関のための再エネ調達実践ガイドやウェブサイト

・地方公共団体実行計画(事務事業編)に基づく公共建築物の省エネ性向上の事例の周知

・ZEH・ZEB や住宅・建築物の省エネ改修のメリットの情報発信等機運醸成など

事例

・岐阜県瑞浪北中学校( 2019 年9月~ 2020 年8月に ZEB 達成)

・氷見市西の杜学園義務教育学校(既存施設を改修でZEB 達成)

・久留米市久留米市環境部庁舎(既存庁舎の断熱改修、太陽光発電設備設置等でZEB化)

・流山市 小規模な施設を一括発注するデザインビルド型小規模バルク ESCO 事業

・世田谷区 公共施設再エネ100% 電力化(区の93施設に再エネ 100%電力を導入)

④住宅・建築物の省エネ性能等の向上

絵姿・目標

2030 年までに新築住宅の平均でZEHを実現

工夫/政策例

・独自基準の設定、事業者研修・認定、認定事業者による省エネ住宅施工の支援

・登録省エネ改修アドバイザーによる住宅のエネルギー性能の簡易診断、省エネ改修推進

・住宅の需要側・供給側の協議会を作り、情報発信等

・住宅・建築物の省エネ改修推進政策

・ZEH・ZEB や住宅・建築物の省エネ改修のメリット等の情報発信

事例

・鳥取県 とっとり健康省エネ住宅性能基準(新築戸建住宅の県独自の省エネ住宅基準)

・長野県等 環境配慮型住宅助成金(木造住宅の新築や省エネ改修時の費用の一部助成)

・大阪府・大阪市 おおさかスマートエネルギーセンター(情報発信やマッチング事業等)

⑤ゼロカーボン・ドライブ(再エネ電気 × EV/PHEV/FCV)

絵姿・目標

・EV/PHEV/FCV が最初の選択肢に

・2035 年までに乗用車の新車でEV車100 %

・EV/PHEV/FCV インフラが整備

・充電インフラの電力及び水素ステーションの水素は概ね再エネ等由来

・EV/PHEVの蓄電は社会インフラとして活用

工夫/政策例 

・EV カーシェアリング(災害時等の非常用電源にも活用)

・自動車会社と自治体間で災害時の給電支援協定

・自律走行機能を搭載した EV バス

・EV/ FCV タクシー

・公用車の電動化の率先実行

・ゼロカーボン・ドライブキャンペーンやモニター制度等を活用した普及啓発

・地域再エネとEV/PHEV/FCV等の同時導入や充電インフラ導入の推進

・公共施設、商業施設等や物流施設等の地域の産業拠点等への充電・充放電設備整備

・トラック、バスの電動化、バッテリー交換式EV等の開発・導入の推進

事例

・小田原市 EV カーシェアリング(再エネ電力を供給した EV を災害時等の電源にも活用)

・三菱自動車工業 DENDO コミュニティサポートプログラム(災害時に給電を支援)

・日産自動車 全国に拡がるEVを活用した災害連携協定(災害時に活用)

・トヨタ自動車 自治体と給電支援ネットワークを構築(災害時に活用)

・境町 自律走行バス(自律走行機能を搭載したEVバス)

⑥資源循環の高度化を通じた 循環経済への移行

絵姿・目標

・市民・事業者と連携した環境配慮設計製品の利用や資源回収・リサイクルが一体的に

・食品ロス量が2030 年度までに半減、食品廃棄物のリサイクル、廃棄ゼロエリア創出

・廃棄物処理で得られるエネルギー活用拡大

工夫/政策例

・ごみ半減プラン(食べ残しゼロ推進店舗認定制度や販売期限の延長)

・食品ロス削減推進計画(消費者・事業者・行政等の連携協力による食品ロス削減)

・有機廃棄物の活用(家庭の生ごみのバイオガス化)

・プラスチックのライフサイクル全般で3R+Renewable の取組

・食べ残しの持ち帰りや寄付、商慣習の見直しで食品廃棄ゼロエリアの創出

・ごみ有料化

・排出ルートの多様化やその周知

・廃棄物を地域の資源として活用する取組

事例

・日野市 プラスチック製容器包装・製品の一括回収

・京都市等 新・京都市ごみ半減プラン(食品ロス削減のため、販売期限の延長を推進)

・富山県 消費者・事業者・行政等の連携協力による食ロス削減の推進計画 

⑦コンパクト・プラス・ネットワーク等による 脱炭素型まちづくり

絵姿・目標

・全国各地で都市のコンパクト化、ウォーカブル化、人中心の空間へ

・まちづくり・地域交通等に関する地域の計画や関係主体間の連携

・2024 年度末までに600自治体で「立地適正化計画」(都市再生特別措置法)

・2024年度末までに1,200件の「地域公共交通計画」(地域公共交通活性化再生法)

工夫/政策例

・都市のコンパクト化やウォーカブル化

・都市内のエリア単位の脱炭素化

・環境に配慮した優良な民間都市開発事業に対する支援

事例

・北九州市 都市のコンパクト化、公共交通の利用促進、エリア単位の脱炭素化

・姫路市等 駅前の空間リノベーション(芝生化など車中から人中心の空間へ)

・松山市等 街路空間の再構築(歩行空間の拡大など車中心から人中心の空間)

⑧食料 ・農林水産業の 生産力向上と持続性の 両立

絵姿・目標

・2050 年までに農林水産業の脱炭素化、園芸施設の脱化石燃料化、農山漁村における再エネの導入

・2040 年までに農林業機械・漁船の電化・水素化等に関する技術確立

・2050 年までに輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の30%低減

工夫/政策例

・堆肥の高品質化、ペレット化、堆肥肥料の生産、広域循環利用システム、自給飼料

・水田のメタン削減(自動水管理システムの導入・中干し期間の延長)

・食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を実現

事例

・鹿追町等 家畜排せつ物等を活用したバイオガスプラント導入によるエネルギー地産地消

・富山環境整備 廃棄物焼却発電施設から発生する排熱を農業用ハウスに活用

・ゆめファーム全農 SAGA 清掃工場から発生する熱及び CO2 を農業用ハウスに活用 

体制構築・支援メカニズム

デジタルXグリーン ライフスタイルイノベーション+ルールのイノベーションなどで国が協力

出典:地域脱炭素 ロードマップ【 概要 】

国は全国での取り組みを後押しするため、さまざまな体制・ルールを構築します。

地域において、地方自治体・金融機関・中核企業等が主体的に参画 した 体制を構

築 し、地域課題の解決に資する脱炭素化の事業や政策を企画・実行

地方支分部局 が、地方環境事務所を中心に、各ブロックにて創意工夫しつつ 水平連

携し、各地域の強み・課題・ニーズを丁寧に吸い上げ、 機動的に支援を実施

さいごに… ゼロエミ事務局から

この「地域脱炭素ロードマップ」がでてからすでに2年も経っています。2022年12月には東京都が、2023年3月には太陽光発電設備設置義務化を含む条例改正をおこなったように、
ロードマップの先を行く施策が進んでいるところもあります。

また、「地域脱炭素ロードマップ」には原子力の活用で脱炭素化を進めるともかかれており、100%その通りにすすめるべきものでもありません。また、「ZEB」についても、新築の住宅はZEH、新築の公共施設や業務ビルはZEB とする、としながら、※ただし、地域の気候風土(豪雪地帯等)や建築物の形態(高層建築物等)に応じて、ZEH については、Nearly ZEH、ZEH Oriented 等、ZEB については、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Oriented も含めるなど合理的に取りあつかう、となっています。高層建築物の定義なしに許容すべきではないでしょう。


それでも、

太陽光については2030年までに約 50%、2040年までに100%に導入、

ZEB、ZEHについては2030年までに新築建築物の平均で実現、

EVについては2035年までに乗用車の新車販売で100%

としていることについては、実現させるべきと考えています。

そのためには、太陽光発電設備の標準化(ハウスメーカーへの努力義務化)、ZEB、ZEHの標準化(断熱等級6以上の義務化)、ガソリン車の販売規制が必要になってくると思います。

国がつくったロードマップを有効に使っていきましょう。

白馬村「ゼロカーボン行動計画」では、取り組み内容、例、効果と補助金情報も

なお、長野県白馬村の有志が、中身もデザインもすてきな「ゼロカーボン行動計画」をつくりました。

テーマごとに「取り組み内容/取り組み例」「CO2削減量」「効果」「懸念」、さらに「参考事例/補助金情報」までついています。こちらも、ぜひ、ご参考に。


PROTECTWINTER.JPウェブサイトより

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