アクションブログ
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8月7日(土)10時30分〜『野心的な市区町村の温暖化対策実行計画の作り方 信州大学茅野先生』▶︎資料公開しました。

2021.08.04

長野県の温暖化対策専門委員をされている信州大学の茅野先生をお招きして、市区町村の温暖化対策計画(区域施策編)の策定方法について解説いただきます。ご自身の自治体の環境政策課のご担当者や、気候変動政策に積極的な議員の皆さんもお誘い合わせの上、ご参加ください。

『野心的な市区町村の温暖化対策実行計画の作り方』
8月7日土曜日 10:30〜12:00

イベントページ
→ https://www.facebook.com/events/267261681437853/?ref=newsfeed

アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=oLqqOF2k47U

当日資料はこちら
https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2021/08/8ddf910b-20210807nagano_zcstrategymunicipalities.pdf
『長野県ゼロカーボン戦略と市町村の温暖化対策との関係』
ゼロエミッションを実現する会 話題提供
2021.8.7 茅野恒秀(信州大学人文学部准教授)

(2021/8/15)当日のQ&Aについても回答をいただき掲載しました↓↓


  • 計画には「実態把握」「進捗管理」が必要ですが、エネルギー関係は実態把握が困難(特に電気の排出係数など)、同時に進捗管理も困難として都道府県の数字を人口で按分する程度のものが多いと聞きます。

→気候変動対策の「計画」を【市町村】【都道府県】【国】【国際社会】のどのスケールで立てて実行すれば合理的か、という問題は研究者としても考えなければならない問いではあるのですが、すでにどのスケールでも速やかに取り組まなければならない危機になっているのが現実です。現状では特に排出量の実態把握を細かなレベルで行うのは困難で、都道府県の数字を人口で按分し、市町村別の統計がある項目についてはその比率で精密に按分することが行われていると思います。

  • 高砂市では企業に非公開を条件に情報提供してもらっているようですが、まずこの「実態把握」「進捗管理」に躓いている自治体が多いのでは。

→「企業に非公開を条件に情報提供してもらっている」ということですが、この使い方が問題だと思います。個々の企業名が類推されないように配慮しつつ、市町村単位の総●●量として公開することは、行政運営の透明性という観点からはむしろ大切ではないでしょうか。仮に、非公開を条件に情報提供してもらっているので、そこから得た情報すべてを公表しないという姿勢の行政機関があれば、それは単なる怠慢です(何のために情報提供を受けるのかを説明できなくなります)。地球温暖化対策計画書制度の対象となる排出量の多い事業所などは、その社会的責任の大きさゆえに対象となっているわけですので、非公開を条件に情報提供を求める行政の姿勢のほうが問題かもしれません。

  • (回答済み)船橋市の市議会議員の松崎と申します。私も市の環境部から「市町村レベルでは、温室効果ガス排出量の実態が環境省から示されない。実態が分からないと減らす取り組みは難しい」と言われました。

→当日もコメントしましたが、これは歴史的迷回答の類ですね。船橋市の地球温暖化対策実行計画も、環境省の(かつての)マニュアルに沿って作成されているのではないかと思いますので、市環境部も承知されているはずです。

  • 江戸川区が策定した「エコタウンえどがわ推進計画」では、分野ごとの排出量を次のように推計しています。産業部門=製造品出荷額、民生家庭部門=世帯数、民生業務部門=事業系床面積、運輸部門=自動車走行距離、です。

→環境省の『地方公共団体実行計画(区域施策編) 策定・実施マニュアル 算定手法編』のp.14から「区域の温室効果ガス排出量の現況推計⼿法」が示されています。お示しの推計手法はおおむねこのマニュアルに沿って設定されているように思います。「おおむね」と申したのは、運輸部門では環境省マニュアルは自動車保有台数を基本としているようです。(※「市町村別⾃動⾞交通CO2 排出テーブル」というツールもあります。)

  • 次に、大規模な廃棄物施設や工場地帯がある場合はその割合が大きくなるので、変な話ですが東京のような都会や長野のような工場がない、車社会でない自治体は排出削減がしやすく、中小地方都市のような自治体は工場部分への対策と車社会の部分がなかなか計画で対応できないという現実があると思われます。工業地域への対策はどのように考えればいいのでしょうか。

→当然、地域の産業構造によって排出削減対策のとりやすいところとそうでないところがあります。高度経済成長期に重化学工業や鉄鋼業が立地した太平洋ベルト地帯や新産業都市(懐かしい…)などがその典型例です。ですがこれら工業開発は国策として進められた側面が多分にありますので、それゆえ、市町村や都道府県だけでなく国の取り組みが重要になると考えています。

工業地域の対策ですが、まずグローバルなサプライチェーンに組み込まれていない工業はもはやありませんので、いずれ供給先からの要請という形で排出削減の取り組みが求められます。感覚としては大手から中小、零細へと(部品メーカーであれば、大きな部品から)手がつけられているという印象を受けます。零細事業所だと、対応の期限を短く切られ、できなければ契約関係を即座に切られる場合も出てくることが容易に予想できますので、市町村が早め早めに対応を促していくことが必要かと考えています。

  • 環境性能の一斉点検ができる業者、というのがあるのでしょうか?あるいは、環境省のマニュアルがあって行政職員がマニュアルに沿って確認できるのでしょうか?質問お願いします。

→大手の建設会社は、環境性能の診断事業はすでに事業構築できていると思います。電力会社やガス事業者もエネルギー消費の観点から同様の事業構築をしています。地場の有力な建設会社も大手の影響を受けて、同様の準備をしているはずです。エネルギー関係事業者でも、たとえば

・備前グリーンエネルギー株式会社

ZEB

などZEB普及のビジネスを進めているところがあります。

  • 省エネ住宅整備促進、低炭素まちづくり、公共施設の省エネ化(計画策定を含む)をずっと提言していますが、何れも十分な事業化に結び付いていません。私の力が足りない部分もありますが、納税者&生活者が公費を使って自分の地域のゼロカーボンを目指すべきといった社会的な意識醸成も必要と思いますがいかがでしょうか。特に、住宅は個人資産なので、難しい点があると思います。

→仰るとおり、長期的な課題が山積しています(残された時間があまりないにもかかわらず)。

直面しておられる問題の根源は、日本の政治・行政そしてその基盤である国民(=選挙結果)が、社会における「公」「共」の役割を一貫して小さくする志向性をもってことと無関係ではないと考えています。例えば、(1)住宅供給を市場メカニズムに任せきりにした結果、住宅が個人資産(私有財産)という考え方も増幅しました。”安かろう、寒かろう”型の住宅が広く流通しているのも、施主と事業者の利害がそこだけ一致してきたからです。(2)都市計画も、中心市街地の人口密度が減っているのに郊外へのスプロール化が止まりません。郊外の拡大は車依存を前提にしていますので、自動車の利用を縮小させることができません。(3)いわゆるハコモノ行政に代表される公共事業への批判は、公共事業が一部の利害を優先して「私物化」されていることが問題の本質であるにもかかわらず、施設を本当の意味での公共施設に進化させる議論につながりませんでした(”無駄を省く”と大きな声で叫ぶ政治家がいますが、彼らは無駄と余裕幅の違いすら理解できない人材がほとんどでした)。

これらは日本社会の体質の問題であり、その改善のためのトレーニングをずっと先送りしてきたために現状があると私は考えています。社会的な意識は変えようと思って変えられるものではありませんし、誰かが変えてくれる・変わってくれるというより、私たちが変わっていくほかないというのが現実ではないでしょうか。

  • (回答済み)補助金とか予算がないことがストップになることについて—このまま放っておくと、逆に将来にコストがかかる・・という論点も可能でないのですかね?

→そのとおりです。何十年に一度、何百年に一度の大災害が毎年起こるようになれば、日本なら「激甚災害」に対応する財政措置が続けられなくなるでしょう。

  • (回答済み)バックキャストで部門別の削減目標を設定したとして、各施策(アクション)による削減効果を積み上げると達成できるように設計されているのでしょうか?

→行政は根拠のない行動計画はつくることができませんので、区域施策編を策定する際に、項目ごとの削減効果の総和が最終的な目標となるように設計されるのが通常だと思います。私がかかわっている市町村でも、現在、区域施策編策定に取り組んでいるところでは部門別の削減目標を項目ごとにできるだけ細かく、どのような行動変革によって削減するかを想定しています。

  • (回答済み)既存建物に対するZEH・ZEB改修はどこまで可能なのか。費用対効果などで見ても、改築(建て替え)が望ましい場合も少なくないと思いますが、そのあたりの見極めをどうするのか。目利きができる仕組み(業界団体や公的団体で)はあるのでしょうか。長野県で推進のために業界団体などと相談していることなどありますか?

→私が理事を務めている自然エネルギー信州ネットでは、7月20日にZEB建築について学ぶオンラインセミナーを開催しました。

建替か改修か、の判断については、建設会社や備前グリーンエネルギーなど地域のエネルギー事業者も、コスト計算等から見きわめのための情報をまとめられます。

  • 市の公共施設での排出量を計算するのに、近隣市と広域での公共施設にすると、算出対象でなくなるので、全体として、減らしていくには。どう、市議会で声を出していけばいいでしょうか。

→公共施設の排出量は、年間のエネルギー消費量から概ね算出できると思います。広域での公共施設とは、一部事務組合所管の施設のようなイメージだとすれば、それも年間のエネルギー消費量から概ね算出できるはずで、それを人口按分したりして、市町村ごとの排出責任を分配すればよいのではないでしょうか。

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