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学校施設の断熱事業は未来への投資:子供たちの学びの環境を考える

2025.06.04

近年、地球温暖化の進行により、日本の夏は年々暑さを増しています。気温上昇の傾向は今後も続くと予想され、熱中症対策は国家レベルの課題となっています。

このような状況の中、2018年度には政府主導で全国の普通教室へのエアコン設置が進められました。しかし、多くの自治体では、断熱性を向上させる改修工事が同時に行わらず、学校施設の老朽化とともにエネルギーのロスが大きな課題となっています。特に、最上階の教室や日差しの強い場所では、エアコンを稼働させても室温が30度以下に下がらない状況が続いてしまい、子どもたちの学習環境や健康への悪影響が懸念されています。

この課題を解決するために、学校施設の断熱改修が早急に求められています。

学校施設の役割と断熱改修の重要性

学校施設は、子どもたちが学び、成長する場であると同時に、災害時には避難所としても活用される重要な場所です。しかしながら、日本全国の体育館等の空調設置率は約2割にとどまっており、断熱性能の改善は必ずしも進んでいません。

こうした状況を受け、近年、学校の断熱について地方議会や国会でも議論されるようになっています。2024年12月には、ながえ孝子参議院議員が、2025年2月には、安藤じゅん子衆議院議員が国会で学校の断熱について質問を行いました。

ながえ孝子議員は「学校の断熱化改修の進捗状況」について質問し、国はその重要性を認識しているものの、改修率については把握していないと答弁しました。

安藤議員は、断熱性能向上の必要性について問い、国は「重要な施策であり、今後も取り組む」との見解を示しました。

安藤議員に関しては、選挙区が千葉6区(松戸市)ということもあり、ゼロエミッションを実現する会の千葉県のメンバーが立ち上げた「ゼロエミちばけん」が開催した学校断熱についての勉強会にもご参加いただき、理解を深めていただいています。

本記事では、2025年2月27日に行われた衆議院予算委員会第四分科会における安藤じゅんこ議員の質疑を紹介し、子どもたちの学習環境や省エネルギーの観点から学校施設の断熱の意義について考えていきます。

  

学校施設における断熱と空調の同時施工の必要性

<安藤議員の質問>

2020年2月、新型コロナウイルス対策として全国一斉の臨時休校が実施された際、学校施設のあり方が問われました。学校施設とは学校・運動場・体育館を含み、少子高齢化や防災機能の強化を考慮しながら整備が進められています。

子どもたちの学習生活の場であるとともに災害時には避難所として活用される学校体育館等について、避難所機能を強化し、対災害性の向上を図る必要があります。しかし、学校の体育館等における空調設置率は約2割にとどまっており、さらなる設置促進が求められています。2024年度補正予算では、公立学校の体育館等の空調設置整備事業費として779億円が計上され、空調設備整備臨時特別特例交付金の算定割合も2分の1に引き上げられました。政府は、10年後の2035年度までに空調設置率を95%にする目標を掲げています。

しかし、空調設備設置工事が先行し、断熱改修が後回しになることが懸念されます。私は、賢い支出の観点からも、断熱改修と空調設置を同時に行うことが不可欠だと考えます。省エネルギーの観点からも、断熱改修の取り組み状況についてお聞きします。

 

<文部科学省答弁>

学校施設の断熱性向上は、児童生徒の快適性、避難所機能の強化、省エネルギーの観点から重要と認識しています。設計計画上の留意事項として、断熱化は温室効果ガスの排出量削減や災害時の温熱環境確保、結露の低減、居住性向上に寄与することが示されています。引き続き、国庫補助を行いながら学校施設の断熱性確保を支援していきます。

 

<安藤議員の再質問>

断熱改修工事を補助事業単独で実施するのは適切でしょうか?

 

<文部科学省答弁>

文部科学省では、教育環境の改善等を図るために、公立小中学校施設の断熱性・気密性向上のための改修工事については、既に国庫補助を行っています。これら内容につきまして、各自治体へ周知を図り、学校施設の断熱性の確保の取り組みを推進していきたいと考えています。

 

「断熱改修費用は回収できる」ゼロエミッションを実現する会の主張を紹介

<安藤議員>

私は自治体議員時代から松戸市議会議員の関根次郎さんをはじめとする、自治体ネットワークとともに、学校トイレの洋式化というものに取り組んできました。子どもたちの学習環境の改善はもちろん、災害時に避難所になる学校のトイレを洋式化することで、避難者の不安を軽減できます。さらに、和式トイレと比較して洋式トイレは約3分の1の水量で流すことができ、子どもや地域にとっても、財政的にもメリットのある取り組みです。トイレについてはリースも補助対象となることから、国も積極的に推進してきたと理解しています。

断熱工事を伴わない空調設備の設置が推進されることは、今後、自治体の電気料金負担の増加を招く可能性があり、私はこの点を看過できないと考えています。これまで各地で断熱ワークショップを実施してきた「ゼロエミッションを実現する会」の方々によれば、「断熱改修費用はランニングコストの低減で回収することができる。学校保健安全法の室内温度基準の厳格化や建築基準法の最高基準を見直すことで、断熱効果をさらに向上させることが可能である」とのことです。

文部科学省の施設防災ホームページでは、調査分析や設計工事の流れが示されており、屋根・壁・床・建具・窓の断熱改修工事の工期や工事費についても、パターンごとに丁寧に事例紹介がなされています。この内容は「体育館の断熱性確保による電気代削減効果についての試算」としてまとめられています。

私は、学校施設の断熱対策を後退させてはならないと考えます。学校の電気料金を低減させることは、地域全体の消費電力負荷の軽減にもつながります。

千葉県では、2019年10月に発生した令和元年台風により、多大な人的・物的被害が発生しました。送電線2本、電柱84本、東海市では2,000本もの電柱が損壊し、大規模停電が発生しました。想定外の大規模気象災害は今後も繰り返し発生する可能性があり、平時から省エネルギー推進に取り組むことが重要です。

また、データセンターの新増設により電力需要が増加する中、次期エネルギー基本計画では「原子力依存度を可能な限り低減する」という文言が削除され、原発の建て替えが言及され、「原子力を最大限活用する」と明記されました。この点については、市民から不安や失望の声が寄せられています。

一方で、再生可能エネルギーの地産地消を推進し、雇用創出を実現している自治体もあります。しかし、国の原発政策が、東日本大震災から14年を迎える今、転換されつつあること、そして地元松戸市では今なお指定廃棄物を管理し続けていることを踏まえ、私は国に対して明確な説明を求めていきたいと考えています。

今年の夏も、気象庁の予報によれば猛暑となる見込みです。子どもたちの学習意欲の低下や食欲不振の要因ともなる暑さに対する対策として、学習環境のさらなる充実と、賢い財政支出の組み合わせによる施策の推進を強く要望します。

 

断熱改修は環境・防災・地域経済にも寄与する賢い投資

今回の質疑を通じて、学校施設の断熱改修は、環境保全、防災、地域経済にも寄与する「賢い投資」であり、私たちの未来を担う子どもたちのためにも、自治体と連携して持続可能な学校施設のあり方を追求する必要があることが、より明確になりました。

 

学校断熱は子どもたちの省エネ意識の醸成にも

学校施設の断熱性向上は、単なるコスト削減策ではなく、未来のエネルギー政策とも直結する重要な取り組みです。原子力依存度を低減し、再生可能エネルギーの普及を促進するためにも、子どもたちが学ぶ場での省エネルギー意識の醸成が必要です。

「ゼロエミちばけん」では、今後も当問題に関心をもち、解決に向けた取り組みを続けて参ります。

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