自治体アクションは一人ひとりが主人公〜神奈川県 愛川町「愛川町ゼロカーボンシティ宣言についての陳情」〜
2024.08.21
2024年6月10日、神奈川県愛川町で「愛川町ゼロカーボンシティ宣言*についての陳情」が総務建設常任委員会で全会一致で採択されました(6月14日の本会議でも全会一致で採択)。
陳情をした、ゼロエミッションを実現する会(以下「ゼロエミ」)参加者さんのなかふみさんに、採択されるまでのストーリーをインタビューしました。
*ゼロカーボンシティ宣言とは:環境省では、「2050年にCO2(二酸化炭素)を実質ゼロにすることを目指す旨を首長自らが又は地方自治体として公表された地方自治体」をゼロカーボンシティとしている。ゼロカーボンシティ宣言は、その宣言。
目次
“自治体アクション”なら、今の暮らしのなかでもできるかも
子どもの頃から環境問題に関心があり環境系の大学で学んでいたりもしましたが、行動には結びついていませんでした。数年前、グレタさんが出てきたり日本でもFridays For Future(若者中心の気候変動に取り組むグループ)が立ち上がり、気候変動への危機感が高まるなか、「自分でも何かしたい」と探しはじめたところでゼロエミに巡り会いました。
変化を起こすためには国の政治にアプローチするのが一番手っ取り早いと思っていましたが、愛川町は都心まで2時間ほどかかるので、オンラインアクションはできても現場にはなかなか行けないという障壁がありました。「自分のまちでアクションする」というゼロエミの方針にとても共感し、これなら私も今の暮らしのなかでできるかも!と思えたのでゼロエミに参加しました。
ヒーローに頼るのではなく、一人ひとりが主人公となって変化を起こす
「国の政治にアプローチ」といっても、実際に施策を進めたり行動するのは結局自治体だったりします。だからこそあちらこちらの自治体から同時多発的にアクションすることが、気候変動の問題をできるだけ早く解決するためには必要だと思いました。
また、国に働きかけたとしても、自分のまちが何もしてないのはダメだと思ったので、「まずは自分のまちから!」という思いで自治体アクションに取り組みました。一人のパワーのある人だけが動くのではどこかで歪みができてしまうと思うので、気候変動という問題があることや、それを解決するために自分たちのまちも動く、ということを、住民に浸透させて機運を高めたいという気持ちもありました。そういうことが民主主義だと思いますし、ヒーローに頼るのではなく、一人ひとりが主人公となって変化を起こしていきたいという思いがあります。
ゼロエミに相談しつつ勉強し、着々と準備
愛川町で一緒に行動してくれそうな人が一人見つかったので、一緒にゼロエミの定例相談会に参加しました。そこで、愛川町の温暖化対策計画をゼロエミ事務局のかずえさんと3人で読み合わせしたところ、小さな心がけが中心で、不十分だな…、ちょっと「恥ずかしいな」と思ってしまう内容でした。
それから愛川町の環境課にこの計画についてや温暖化対策について質問をしたり、環境審議会を開いてほしいことなどを伝えたりしましたが、なかなか実を結ばず、めげてしまった時期もありました。その間にも「陳情を出したい」と思いながら、いろいろと勉強して準備を進めていました。
提出期限は明後日!!急展開の陳情書提出
ゼロエミからのアドバイスを受けて、まずは「ゼロカーボンシティ宣言」を出してもらうための陳情をすることに決めました。この宣言をすることで愛川町としての方向性や目標が定まり、その後の具体的な施策も考えやすくなるためです。また、「ゼロカーボンシティ宣言」は国が進めているという点でも取り組みやすく、神奈川県内では多くの自治体が宣言しているなか、愛川町も仲間入りしたいという気持ちもありました。
まちの議員さんが全員参加する愛川町議会主催の相談会があり、そこで議員さんといろいろお話しして少し自信を持てたので、その直後に次の陳情の締め切りを確認したところ「明後日です」と言われました。急展開でしたが慌てて陳情書を作成する運びとなりました。
すぐにゼロエミに相談して、ゼロエミの例文集を参考に愛川町の要素を盛り込みながらなんとか完成させました。ゼロエミなしにはできなかったことです。
委員会・本会議にて全会一致で採択!そこまでの道のり
陳情提出後、まちで一番大きい議員団の町民相談会に参加して、賛同していただくためにお話ししました。それにあたっても、用意すべき資料や想定質問、何を重点的にお話しすべきかなどを、ゼロエミに相談しながら準備しました。また、メールで他の会派(議員のグループ)にもご連絡し、アポが取れたらお話ししに伺ったり、会えなくても「よろしくお願いします」と思いを伝えたりしました。
愛川町には4会派があり、最大の会派を含む3会派は過去に「ゼロカーボンシティ宣言」について言及していたことが、過去の議会の議事録などを調べているなかでわかりました。これならきっと陳情にも賛成してもらえそう、という期待もありつつ、実際にお話しできた議員さんからの「油断しないように」というアドバイスもあり、陳情提出から本会議までの約4週間は緊張感が続く日々でした。
議会で、議員の前で自分の考えや思いを発表できる意見陳述の機会を得られることとなり、周囲に呼びかけて仲間を探しました。愛川町のゼロエミ参加者さんや、議員の相談会で出会った方、町内の有名企業の方、厚木市の気候市民会議*で一緒だった方など4人の仲間が集まってくれ、大きな力になりました。
*厚木市では、一般市民が集まって話し合い、自分たちの地域で何ができるか提案する「あつぎ気候市民会議」を開催しており、なかふみさんはスタッフをしていた。
心強いサポートと豊富な知識が大きな自信に
まちについての理解を深めるため、温暖化対策計画を読んだ他に、環境省が公開している「排出量カルテ」で愛川町のデータを読んだりもしました。それによると産業部門からのGHG(温室効果ガス)排出が多くなっていることがわかり、まちとして排出量削減に取り組む意義は小さいということなのか?と少し不安になりました。これもゼロエミに相談してみたところ、産業技術総合研究所の歌川さんが愛川町の排出状況の実態や対策による削減効果などを計算してくださり、まちとして取り組む意義は十分にある!ということが分かったので、大きな自信になりました。議員さんなどに説明する際にも根拠として示すことができて助かりました。他にも、ゼロエミの定例相談会に参加した際に、明日香先生(東北大教授:環境科学研究)が励ましてくれたのも嬉しかったです。
議員さんたちは町民の味方、一緒に動いてくれる存在
議員さんたちに会った時、話をよく聞いてくれたり委員会でも賛同する側にたった発言をしてくれたりと、力になろうとしてくれているのを感じました。議員さんは町民が何を求めているか気にしてくれていて、町民からの相談が来るのを待っている、町民の味方なんだ、と思いました。一緒に動いてもらうためにも、たくさん話したり要望を届けたほうがいいんだという気づきがあり、議員さんとの距離が近づいたように思います。議会事務局の方も丁寧に対応してくれて、町民参加が求められていると感じ、嬉しかったです。
自治体アクションをしてみたい方へのメッセージ
愛川町は自然がゆたかな田舎町で、とても好きですし、ここで暮らしていきたいと思っています。だからこそ、恥ずかしいと思ってしまうのではなく、誇りに思えるまちであってほしい、という気持ちが強く、今回アクションをしてみようと思いました。
取り組んでみて、ドキドキしたこともたくさんありましたが、議会で全会一致で賛成してくれたという結果もあり、本当にやってよかったと思っています。温暖化対策計画や排出量のデータを読んで自分のまちについてさらに知ることができました。また、議会での過去の質問を確認するなかで、議員さんが「温暖化」「気候変動」というキーワードに何度も触れていたという発見もあり、議員さんたちの問題意識も再認識できました。今回のアクションの意義を感じて自信になりましたし、議員さんたちのこれからにも期待を持てて嬉しかったです。
自治体アクションの主役はそのまちの人たちなので、あなたの力が必要だと思います。ゼロエミという心強い仲間とネットワークがありますし、やりがいは大きいです。ぜひアクションしてみてください!
提出した陳情書
ゼロエミッションを実現する会では、市民からの自治体・議会へのアプローチを行っています。
今まで取り組んだことのない方でも大丈夫。
「ゼロエミッションを実現する会」には、たくさんの仲間がいます。
ご参加リクエストをお待ちしています!
Slackは、地域別チャンネルを中心に具体的なアクションを行うコミュニケーションツールです。
Facebookグループは、アクションのための情報交換を行うグループです。